エピソード

ギャッベ

アートとしてのギャッベ

ひとつのエピソードがある。

「今日もまた1枚のギャッベも売れなかった。」イラン南部の都市シラーズのバザール。その門の脇にある間口4mもない小さな店で、うず高く積まれたギャッベの山を前に若き絨毯商は大きなため息をついた。彼の周りにの人々は、「あんな安物の商品価値のないラグを買い集めて、ヤツは何を考えているんだ」そんな陰口も聞こえる毎日であった。
そんなある日一人のスイス絨毯商がイラン人通訳を従えて店にやって来た。彼は他の誰もがするように「一枚も選ばないのか・・・また今日も」と心の中でつぶやいた。
ところが、そのスイス人の表情を良く見れば、目が輝きとても楽しげだった。そして、時々彼の口からでる「ART」と言う言葉に彼は胸の高鳴りを覚えていた。結局そのスイス人は156枚すべてのギャッベを残らず買ったのだ。その横でイラン人通訳はスイス人に向かって「こんなゴミを買ってどうするつもりだ」と聞いた。所がその後1カ月も経たぬ内に同じスイス人絨毯商がシラーズにやってきて「同じようなタイプの物を1000枚欲しい」と注文を出して行った。
ギャッベが今日、世界で認められるそのアート性を最も早く見い出したのがスイス人だと言われているエピソードは、そのデザイン・素朴さ・草木染、その要素のすべてが現代アートの世界に共鳴する作品であることを示している

ギャッベ